「ローマ人の物語」ついに読破す。

文庫版にして全43巻。いったいいつから読み始めたのかまるで覚えていないが、ようやく最後まで読むことができた。すべて連続して読み進めていればもっと早く読み終えることができたのかもしれないけど、読みたい本は他にもたくさんあって、色々浮気していたら数年かかってしまった。

「ローマ人の物語」はイタリア在住の作家である塩野七生さんの作品で、古代ローマの興亡の歴史を綴ったものである。この作品が独特なのは、作者である塩野七生さんのバックボーンが学者ではないとゆうところにあると思う。

学習院女子大学で哲学を学んだ彼女はイタリアに移住し、ヨーロッパを旅する中でその目でローマの足跡を見てきた。そうして得た知見を作家ならではの文章の読みやすさで表現することで、僕のようなローマ初心者でも飽きることなく読み続けることができる。

また、哲学とゆう思考の学問を修めた彼女ならではの解釈が多分に含まれていて、従来の歴史学とは違ったユニークなローマ像を味わうことができる。

僕はローマ初心者といったが、それは古代ローマの歴史についてのことで、実は以前ローマに住んでいたことがあるのだ。その時は歴史なんて全く興味がなくて、町中遺跡だらけで地下鉄もろくに掘れないなんて不便だなぁなんて気楽に思っていた。帰国してからローマの歴史の魅力にどっぷりはまるようになって初めて、なんてもったいないことをしたんだと激しく後悔したものだ。なんせちょっと歩けば2000年前の遺跡を目の当たりにすることができたのだから。

それにしてもこの本を読めば読むほど今まで知らなかったローマを知ることができるようになった一方、いつの時代も人間や人間社会の本質は変わらないのだと感じた。特に「盛者必衰」の理については。

ローマは完璧に近かった。それまでの人間世界は戦争が基本。殺しては奪い、支配する。勝者が正義で敗者は殺されるか良くて奴隷。

そういった世界でローマは初めて敗者と同化し、受け入れることで勢力を広げていった。敗者にも権利を認め、参政権を与え、有力者はそのまま残し、宗教さえも従来のまま信仰を持ち続けることを許した。

そしてそれとは別に「法」とゆうものを作り、この「法」によって人々を統治したのだ。

ローマの繁栄の秘密はこの「寛容さ」、つまり「クレメンティア」にあるといわれている。

ヨーロッパにおいて歴史上の文明化とは、ローマに組み込まれた瞬間を指す。

イギリスの首相チャーチルは、かのユリウス・カエサルがブリタニアの地に降り立ったときこそイギリスの文明化の瞬間であり、ドイツにおけるローマ化よりも早かったとした。

ローマの支配はヨーロッパだけではなく、北アフリカや現在のトルコ、シリアなど中東アジアにも及んだ。そしてパクスロマーナと呼ばれる時代がやってくる。

水道や街道がローマ中に整備され、通貨制度も高度なものになった。

戦争もほとんどなく人々は自由に国中を往来できた。

ほとんど完璧といっていいほどに国が熟成されたのである。

しかしながら、そんな完璧なローマでさえ滅びたのだ。今や我々は想像でしかその世界を見ることはできないが、繁栄を極めたローマも滅びる瞬間はあっさりしたものだった。大国との戦争に敗れたわけではなく、蛮族の群れに荒らされていつの間にか滅びたのだった。

43巻もあるこの「ローマ人の物語」は、その壮大さやロマンだけではなく、人間社会の繊細さや脆さを感じさせてくれる。

「人間ってすごいなぁ」と同時に、「人間て大したことないなぁ」なんて感じてしまうのである。

さて、塩野七生さんの作品で次に気になるのは「ギリシャ人の物語」だが、これは幸い単行本で3冊にまとめられている。近いうちに読んでみることにしよう。