「ファースト・マン」史上初の偉業を達成した男と家族の心を繊細に描いた傑作。

今でこそ人類は当たり前のように宇宙に行き、日本人宇宙飛行士も珍しい存在ではありませんが、1969年にアポロ11号に乗り込んだニール・アームストロング船長にとって、世界初の月面着陸を目指すとゆうミッションは決して偉大なだけではなく、幾重もの犠牲を必要とするものでした。

宇宙飛行士とゆうと一般的にイメージするのはその華々しさ。人類の英知とテクノロジーを詰め込んだロケットに乗って颯爽と宇宙へ飛び出してゆく一種の「スター性」ではないでしょうか。

しかしながらこの映画が描いているのは、そんな輝かしい功績をたたえる喜びよりも、それまでに繰り返してきた失敗や仲間たちの犠牲、ミッションの目的に対する意義の揺らぎなど、関係者達の苦悩です。

宇宙ものによくある「感動的な音楽を背景に管制塔で喜び抱き合う男たち」や「困難な場面をジョークとともに笑い飛ばす粋なエリート」のようなシーンはほとんどありません。すべてのシーンにおいて無駄な演出が一切なく、まるでドキュメンタリーを見ているかのような質感で描かれています。

最初から最後まで一貫として緊張感が保たれていて、俳優陣も細かい感情の変化を繊細な表情や動きで見事に演じ切っています。

史上初の月面着陸とゆう史実を映画化することはどんな映画監督にとっても困難なチャレンジであるのは間違いありませんが、メガホンを取ったデイミアン・チャゼルの解釈は見事とゆうほかありません。家族内での日常と、宇宙とゆう非日常が見事につながっていきます。

特にラストシーンはこの映画の真骨頂ではないでしょうか。物語を通じて困難と立ち向かい、偉業を成し遂げて帰ってきた後の心が率直に表現されたシーンだと思います。こうゆう演出をしたチャゼル監督は、やはり並みの映画監督ではないなと感じさせます。

主役のニール・アームストロングを演じたのはチャゼル監督とタッグを組んだラ・ラ・ランドのイメージが強いライアン・コズリング。ミュージカルでも光っていた繊細な表情の変化を見せる演技が、今回は最大限活かされています。ラ・ラ・ランドのコンビによる史実映画とゆうことで話題になった一方、どうゆう表現になるのか想像ができなかったのですが、見終わってみると両者の強みが発揮されていて妙に納得してしまいました。

個人的ハイライトは前述したラストシーンと、宇宙に旅立つ直前の長男が悟った瞬間。

もう鑑賞した方はわかってくれる方もいるのではないでしょうか。